政府は14日、「日本再興戦略」(成長戦略)と「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太方針)を閣議決定しました。これで、現政権の経済財政政策に関するメニューは出そろいました。

「日本再興戦略」は、これまで第1弾(4/19)、第2弾(5/17)、第3弾(6/5)と安倍首相が順次発表してきた内容を基本的に踏まえつつ、成長実現に向けた具体的な取組みとして、「日本産業再興プラン」、「戦略市場創造プラン」、「国際展開戦略」の3つのアクションプランにカテゴライズした上で、それぞれの各政策課題ごとに中短期の工程表を示しています。
このうち、「日本産業再興プラン」においては、日本経済の3つのゆがみ(「過小投資」、「過剰規制」及び「過当競争」)を根本から是正し、グローバル競争に勝ち抜く筋肉質の日本経済にするため、今後5年間を「緊急構造改革期間」と位置付け、集中的に取組を進めるとし、「産業競争力強化法案(仮称)」を本年夏までに方針を固め、速やかに国会に提出し、これを中核に、あらゆる政策資源を集中的に投入するとしています。さらに、今後3年間を「集中投資促進期間」と位置付け、国内投資を促進するため、税制・予算・金融・規制改革・制度整備といったあらゆる施策を総動員するとし、生産設備の新陳代謝(老朽化した生産設備から生産性・エネルギー効率の高い最先端設備への入替え等)を促進する取組を強力に推進し、これに応じて生産設備の新陳代謝を進める企業への税制を含めた支援策を検討し、必要な措置を講ずるとしています。
また、産業基盤を整備した上で社会課題をバネに新たな市場を創造する「戦略市場創造プラン」については、健康長寿(健康管理・医療・介護)、エネルギー、次世代インフラ、地域資源(農業・観光)の4分野をと整理し、2030年時点の達成すべき社会像、指標、ライフスタイルを設定するとともに、2020 年頃(中間段階)の社会像、2030 年までの戦略分野ごとの施策展開の長期工程表を整理しています。

一方、骨太方針におきましては、名目国内総生産(GDP)比でみた国と地方の基礎的財政収支の赤字を2015年度までに10年度から半減させ、20年度までに黒字に転換する目標を堅持し、「経済再生と財政健全化の好循環を目指す」と明記しました。「日本再興戦略」も踏まえ、「停滞の20年」から「再生の10年」を実践し、今後10年間で名目3%程度、実質2%程度の経済成長率を目指すとしました。

今回閣議決定されたこれら2つについては、これまでも議論の過程でオープンになっていたものがほとんどであり、特に目新しいものありませんが、これまでも指摘してきているように、成長戦略については、「一丁目一番地」のはずの「規制改革」への踏み込みが不足しています。また、国による財政・税制等の支援策は多くのメニューが並んでいますが、例えば、「産業競争力強化法案(仮称)」による国の関与の仕方によっては、「民間活力の爆発」により産業の構造改革を進めるという本成長戦略の基本理念に反しかねない要素も孕んでいます。

財政健全化につきましては、「三本の矢」により強い経済を実現し、経済再生が財政健全化を促し、財政健全化の進展が経済再生の一段の進展に寄与するという好循環を目指し、持続的成長と財政健全化の双方の実現に取り組むとし、経済の再興(民間主導による持続的成長)による税収増を通じて財政再建に繋げていくという基本的な考え方に基づいているように見えます。歳出総額の見直しについては、国・地方双方で徹底した取組が必要であるとし、社会保障以外の支出について、一層の重点化・効率化を進めるほか、社会保障支出についても聖域とはせず、見直しに取り組むとはしていますが、具体的な数値目標等は示されておらず、成長戦略のメニューにも国の歳出増や歳入減の要素があることも踏まえると、プライマリーバランスを2020年に黒字化する道筋が見えていません。政府は、今後早期に策定される「中期財政計画」において、財政健全化目標への具体的な道筋を明確に示す必要があると思います。

 成長戦略第1弾

 成長戦略第2弾

 成長戦略第3弾

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