安倍首相は17日、6月にまとめる成長戦略の第2弾を発表しました。

首相は、4月の成長戦略第1弾では、「挑戦:チャレンジ」、「海外展開:オープン」、そして、「創造:イノベーション」を成長戦略の3つのキーワードとしましたが、今回の第2弾では、その3つの要(かなめ)として「行動:アクション」を掲げました。

首相は「世界で勝って、家計が潤う」を掲げ、国際競争力を強め、世界の市場で成長戦略を進める考え方を示しました。「行動」なくして、「成長」なし。「世界中のどこへでも出かけ、トップセールスを進めていきたい」としました。

今回の発表では、成長戦略の大きな柱として「民間投資の喚起」を掲げ、その実現の鍵として2つのことを掲げています。一つは、「日本から世界に展開する」として、従来のインフラだけにはとどまらず、医療、食文化、宇宙、防災、エコシティ等、日本が生み出した優れたシステム、技術を、世界に展開していくこと、もう一つは、「世界から日本に取り込む」として、世界の技術、人材、資金を、日本の成長に取り込むことを掲げ、日本で、大胆な投資を喚起しなければならないとし、政府も投資しやすい環境を整備していくが、企業に対してもチャレンジする努力を求めています。

民間の設備投資については、リーマンショック前の年間70兆円規模(昨年度は63兆円)を目標に掲げ、「20年近くかかって委縮しきったマインドを解き放つ」ため、今後3年間を「集中投資促進期間」と位置づけ、「税制、予算、金融、規制改革、制度整備などあらゆる施策を総動員する」とし、「新たなイノベーションに挑み続ける企業に大きなチャンスを創る」としました。具体策として、「ベンチャー企業への投資も極めて重要」とし「個人保証がなくとも融資が受けられるような、中小企業・小規模事業者向け金融の新たな枠組みをつくる」としました。

また、首相は「農業の構造改革を、今度こそ確実にやり遂げる」としています。そして、「農地の集積なくして、生産性の向上はない」とし、「都道府県段階で、農地の中間的な受け皿機関を創設する」とし、「農地集積バンクとも呼ぶべきこの公的な機構が、さまざまな農地所有者から、農地を借り受け、必要な基盤整備なども行った上で、民間企業も含めて農業への意欲あふれる「担い手」に対して、まとまった形で農地を貸し付けるスキームを構築していく」としました。さらに、「耕作放棄地についても、意欲あふれる「担い手」による農地利用を促すため、必要な法的手続きを思い切って簡素化する」としました。

 そして、「これらを柱に施策を総動員することで、必ずや、農業・農村の所得は倍増できるはず」とし、「現在1兆円の「六次産業化」市場を、10年間で10兆円に拡大していく」とし、「今後10年間で、六次産業化を進める中で、農業・農村全体の所得を倍増させる戦略を策定し、実行に移す」としました。この20年間で、農業生産額が、14兆円から10兆円へ減少する中で、生産農業所得は、6兆円から3兆円へと半減しましたが、今後10年間の取組として 「農業・農村の所得倍増目標」を掲げました。現在340兆円の世界の食市場が今後10年で倍増するとの想定のもと、日本の農産物・食品の競争力を高め、その輸出額を2020年には1兆円に倍増させるともしました。

今回の発表は、企業活性化・農業強化に加え、クールジャパン、大学改革等も含め、一定の数値目標を示し、目指すべき姿を提示しました。

日本企業が競争力を高め、賃金・雇用増を通じて家計に恩恵を及ぼしていくという総論については私も異論はありません。全体を読んだ印象としては、文章もうまくまとまってはいます。ただ、問題は総動員する政策の中身です。規制改革についても、官僚が準備できるものは並んでいますが、「聖域」には踏み込めていない印象です。例えば、「混合診療」や農業への株式会社の本格的参入には踏み込めていません。

 既存の制度・規制に守られている「既得権益」にメスを入れ、民間の新規参入等により創意工夫によるイノベーションが生まれるような環境整備が本当にできるか。今回の発表からは、「聖域」に踏み込むことには及び腰の自民党政権の限界が透けて見えてきます。

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