政府は12日、日本の環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加に向けた日米間の事前協議で合意し、決着したと発表しました。

日米合意により日本は早ければ7月にも交渉参加する見通しとなりました。アジア太平洋地域における貿易・投資のルール作りに積極的に参加し、同地域の成長を日本経済の再興に取り込んでいくうえでも、今回の合意によりぎりぎりのタイミングで船に間に合ったことの意義は大きいとは思いますが、日本政府は、米業界と連携する米議会の動きに配慮せざるを得ない米国政府に対し一定の譲歩を強いられました。

米国が日本車にかけている関税率の引き下げと撤廃時期を「最大限に後ろ倒しする」こと、日本郵政傘下のかんぽ生命保険によるがん保険等の単品医療保険分野で新商品の販売を当面凍結することなどが今回の合意の柱で、日本車の輸入増を警戒する米自動車業界に配慮するとともに、政府出資が残る日本郵政の業務拡大は「公正な競争を阻害する」という米保険業界の主張に沿った決着となりました。自動車・保険分野は、政府間交渉において米国が長年テーブルに乗せてきたテーマであり、コメなど農産品を守ろうとするあまり、日本政府の譲歩が目立った決着となりました。

今後は、TPP交渉参加により、日本が、貿易・投資に関する公正で透明性の高い新たな国際的なルール作りを主導することができるかどうかが大きな焦点となると思います。このためには、米国とも連携して新興国の貿易・投資の自由化を促すことも必要になります。

政府としては、TPP交渉において出遅れを挽回してルール作りを主導するとともに、参加各国の自由化圧力が強い中での自民党が求めるコメ・麦など農産品5品目の関税撤廃の例外扱いに係る交渉・調整に加え、国内農業の強化策の提示等を急ぐ必要があります。

日本と欧州の経済連携協定(EPA)交渉や中国・韓国・インドなどが参加する東アジア16か国による包括的経済連携協定(RCEP)交渉も間もなくスタートします。政府としては、将来の貿易・投資に関する国際的なルール作りについての明確なビジョンと戦略を持って、今回のTPP交渉参加も梃にして、こうした大型の経済連携協定についても、交渉を主導していく必要があります。

 

 

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