黒田総裁が誕生して初の金融政策決定会合で、4日、日銀が新たな金融緩和を決定しました。
2年間で2%の物価上昇率を目指す「量的・質的金融緩和」の導入により、マネタリーベース(市場に供給するお金の量)を2年間で2倍(138兆円→270兆円)に拡大します。金融政策の目標を金利からマネタリーベースに切り替え、「量的緩和」を7年ぶりに復活させました。
黒田総裁は「これまでと次元の異なる金融緩和」とし、一連の緩和策を示しながら「戦力の逐次投入をせず、現時点で必要な政策を全て講じた」としました。
長期金利の低下を促すため、購入対象の国債を長期化し対象となる国債の平均残存期間を市場平均の7年(従来は3年弱)まで伸ばし、毎月の国債の買い入れ額は7兆円(従来は4兆円)と月間の国債発行額の7割に達します。また、リスク資産の買い入れについてもETF(株式上場投資信託)を年1兆円、REIT(不動産投資信託)を年300億円増やします。これにより、長期国債・ETFの保有額を2年間で2倍に拡大します。黒田総裁は「長めの金利や資産価格に直接働きかける」とし、日銀として、長期の金利の低下や資産価格の上昇を促す姿勢を明確に示しました。「市場や経済主体の「期待」を転換させる。予想物価上昇率を上昇させ、15年間続いたデフレの脱却に導く」と強調しました。
今回の金融緩和策は市場にとってもサプライズとなり、決定を受けて株高・債券高・円安が急速に進展しています。特に、10年物の国債金利は一時0.415%まで低下し、過去最低水準を更新しました。
私としては、新体制発足後初の金融政策決定会合で、2年程度で2%の物価目標を達成するまでこのような大胆な緩和策を継続することを宣言し、小出しの対応に終始しデフレの克服に失敗した旧体制とは異なり「戦力の逐次投入をせず、現時点で必要な政策を全て講じた」としたことは大いに評価すべきと思います。
今後は、政府の対応も焦点となります。
日銀としては退路を断ってデフレ脱却に向けた決意を示しました。企業や消費者の期待に働きかけ、設備投資や消費の拡大を引き出す「第1の矢」は放たれました。今度は政府が2の矢、3の矢で応える番ですが、特に重要なのは「第3の矢」、すなわち、実効性のある「成長戦略」を政府が提示できるかどうかです。
自由貿易の拡大や規制改革・民営化を進め、民間の創意工夫により成長のためのイノベーションが生まれる環境整備、こうしたことにより、雇用の拡大や賃金の上昇に繋がっていくような経済の好循環を実現していかなければなりません。旧体制の日銀が強調していたように、資金量を如何に拡大したとしても民間の資金需要が増えていくようなパスがなければ政策効果は出て来ませんし、かえって、その副作用が経済の悪化を招くことになりかねません。