政府は2日、家庭向けを含む電力小売りの完全自由化、電力会社からの送配電部門の分離(発送電分離)、電気料金の完全自由化を盛り込んだ電力システムの改革方針を閣議決定しました。
改革は15年から5年程度かけて3段階で実施することとし、15年には電力需給を全国的に調整・融通する仕組みを設け、16年には電力小売りの参入自由化、そして、18〜20年には、電力会社の送配電部門の中立性・独立性を高める発送電分離を行うとともに電力小売りの料金規制を撤廃するとの内容です。
改革は60年間続いた地域独占をベースとする現行の電力制度を大転換するものであり、電力小売りの自由化を進めることにより、太陽光等の新エネルギーの事業化の促進、他業種からの電力小売りへの参入促進等を通じて、電力会社の競争を促すことにより、国民の生活インフラ、産業インフラである電力を安く安定的に供給できる体制整備を目指すものです。
私としても、東日本大震災でもその弊害が明らかになった電力事業の地域独占構造にメスを入れ、成長産業でもあるエネルギー産業について規制改革・自由化を進めることは賛成であり、これまで電力業界や自民党の根強い反対で先送りされてきた電力改革が大きく進展することを期待したいと思いますが、そのためには、政府として、次の2つのことを覚悟を持って行っていくことが必要だと思います。
一つ目は、政府として、将来のエネルギーのベストミックスを示すこと、そして、それを実現するための工程表を示すことです。
今回の改革方針は、主として法制度面の改革について3段階での関係法令改正の基本方針を示したものですが、新制度によって、政府の意図するような安くて安定的な電力供給が本当に実現するかどうかは、制度の運用に大きく依存すると思います。実際、既に新規参入が自由化されている企業向けの電力小売り市場において電力事業の独占構造は基本的は変わっていません。
政府として、脱原発依存、自然エネルギー等の導入を含む将来のエネルギーのベストミックスを示すとともに、必要な新規参入促進策を明確に示し、民間企業が計画的に電力小売り等の事業に参入できるようにする必要があります。
二つ目は、今回の改革方針を堅持し、改革を後戻りさせないことです。
今回の改革方針の作成過程においては、3段階目の発送電分離等に関する法案提出時期について、政府案の「15年に提出する」が、電力業界の支援を受けている自民党の意向で「15年を目指す」という努力目標になったと報道されています。
もとより、今回の大改革を実現するためには、新制度の下での電力の安定供給を如何に担保するかといった多くの課題もあることは理解しますし、こうした諸課題に適切に対応した具体的な制度設計を今後検討する必要があるとは思いますが、今後の国民生活の安定や日本経済の成長に大きな影響を及ぼす改革だけに、電力業界等の既得権益を守るための改革の後退は許されません。