自民党安倍政権が発足して2か月が経ちましたが、政権支持率は70%程度と好調です。この間、「アベノミクス」と称せられる経済政策を早々に打ち出し、国内外の話題となっていますとともに、円安・株高により景気回復期待が高まっていることが大きな要因と思われます。

安倍政権は、デフレ脱却を目的として、大胆な金融緩和、機動的な財政出動、成長戦略を「3本の矢」として取り組むこととし、既に、日銀と連携し2%のインフレターゲットを設定しましたほか、12年度補正予算案及び13年度予算案を15か月予算として国会に提出する等、1、2番目の矢については早急に手を打ちました。

私も、大きな方向性としては基本的に異論は無く、短期間にこうした大胆な政策を打ち出したこと自体は評価した上で、今後、政策の実効性を注視していきたいですが、現時点において、以下の点を課題として認識しています。

第一に、金融政策の実効性です。日銀が政策を大転換し、インフレ目標、それも2%という高い目標を掲げたことにより市場の期待が高まり、円安・株高が誘導されていますが、実際に、期待通りインフレ率が上昇していくかどうかは今後の政策次第です。近いうちに決定する新総裁が、インフレ目標に沿った形で、これまでのように小出しの対策ではなく、本当に大胆な緩和政策を採ることができるかどうかが大きな課題でしょう。

第二に、財政政策の実効性及び財政の持続可能性です。補正予算については規模ありきの議論であったように思われ、公共投資偏重でありますとともに、執行可能性等の分析も不充分であり、真に投資効果の高い事業かどうかの検証も充分にできていません。また、財政再建の道筋も現時点では明確に示されていません。6月までに経済財政諮問会議で方針を打ち出すとのことですが、今後の議論の推移を注視する必要があります。

第三に、そして、私はこれこそが最も大きな課題と考えますが、成長戦略の中身及びその実効性です。行政の守備範囲を見直し、既得権益を廃した上で、規制改革・民営化と自由貿易の推進を真に実効性がある形で進めることによってのみ、民間の自由な参入とその創意工夫の発揮を通じてイノベーションが生まれ、経済成長の源泉になっていくと考えます。業界団体に支援されている自民党政権が本当にこうした痛みの伴う改革ができるか。大いに注視していきたいと思います。

安倍政権は、日米首脳会談を無難に乗り切り、日中関係や対北朝鮮問題で難題を抱える中で、外交の基軸が日米同盟であることを内外に示すとともに、TPP交渉についても参加表明する見通しとなりましが、現時点では、政権は、参議院選挙を控え「安全運転」に徹しており、議論が分かれるテーマについてはエッジの効いた方向性は示せていません。

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