参院本会議で24日、共通番号制度関連法(マイナンバー法)が可決、成立しました。

国民一人ひとりに番号をふることで、行政にとっては、所得や社会保障などの個人情報を一元的に管理することを通じて年金の支給や徴税の漏れを減らすことができるメリットがあるとともに、国民にとっても、番号が入ったICカードを使うことにより様々な行政手続きがスムーズにできるメリットがあります。2015年10月、全ての国民に個人番号が通知され、16年1月以降、顔写真入りのICカードの受け取りが可能になり、行政機関による利用が開始されます。本法により、国民が自分の情報の内容や当該情報の利用のされ方をインターネットで確認できる「マイポータル制度」も動き出します。

先進各国では共通番号制度はほとんどの国で導入済みですが、日本においては1968年に当時の佐藤内閣が国民総背番号制の導入を目指して頓挫して以来、長きにわたって官民で様々な議論がされてきましたが、本法により漸く制度が日の目を見た形です。国による個人情報の一元管理に対する拒否反応や個人情報流出の恐れがあることなどが制度導入の妨げになっていましたが、マイナンバーシステムの土台ともなる住民基本台帳ネットワークシステム(2002年稼働)が安定的に運用されていることもあり国民の不安も和らぎました。

マイナンバー制度については、国民のプライバシーに係る情報漏洩の問題が常に議論されてきました。実際、民間利用も認めているアメリカでは個人カードに写真が載っていないことからその不正利用が多発しています。政府は他国での不正利用の原因を突き止め、その防止に努めるとしていますが、2016年の制度導入に向けて、情報漏洩対策は急務です。

マイナンバー制度は民間利用等を禁止していますが、本法の付則で施行後3年を目途に利用範囲の拡大を検討するとしました。2018年10月に向けて、今回先送りされた医療・民間利用への利用範囲の拡大が検討課題になります。医療診療情報などに利用範囲を広げることで利便性はさらに向上しますが、これに反対する医師会との調整も必要になります。経済界は民間企業のサービスへの利用範囲の拡大を求めています。経団連は「共通番号を使えば、年間3兆円の経済効果が期待できる」としています。民間利用については情報漏洩の懸念を払拭できるかどうかがポイントです。

行政サービスのインフラとして、そして、行政分野の利用範囲の拡大や、更には民間企業のサービスへの利用範囲の拡大で、将来的には更に大きな可能性が見込めるマイナンバー制度ですが、2700億円もの投資を行う大事業ですから、2016年の制度導入、そして、2018年以降の制度の改革に向けて、情報漏洩等の対策をしっかりと進めつつ、国民的なコンセンサスを得たうえで、利用者の目線で、国民にとってより利便性・信頼性の高い制度に発展させていく必要があます。

 

 

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