安倍政権は10日、政府が全株を保有する日本郵政の社長に西室泰三郵政民営化委員長を起用する人事を内定しました。
民主党政権末期に衆議院選挙直後の間隙を縫って就任した財務省出身の坂篤郎社長を交代させ、民間出身で郵政事業に精通している西室氏を社長に充てることで、経営陣から民主党色を排除する人事と診られます。昨年末の斎藤次郎前社長から坂社長への突然の交代について財務省が自分たちの権益を守るためのたらい回し人事と批判していた菅官房長官主導の決定と思われます。
日本郵政にとっては4代目の社長になってもこれまでと同様に政治の介入を受ける形になりますが、背景には日本郵政のあり方を巡る議論があります。
小泉政権時代の2007年、「郵政民営化法」においては、日本郵政(持ち株会社)は2017年までにゆうちょ銀行(銀行業)・かんぽ生命(生命保険業)の2子会社の株式を全て売却し、両社を完全民営化することになっていましたが、民主党政権時代の2009年に株式の売却を凍結し、2012年に改正された民営化法においては、2子会社の株式の売却については期限が明示されない形となり、日本郵政の経営陣がその時期を決定する枠組みとなりました。今回の人事は、経営陣の入れ替えを通じて、民営化を進める方向に舵を切るきっかけになるかもしれません。
日本郵政は、郵便事業の赤字を解消し、中期経営計画を示したうえで、2015年度の株式上場を目標に経営改革を進めていく必要があります。
現在は100%国が株式を保有しており国有民営の状態ですが、民営化されている以上、自律的な経営により、経営陣主導で経営改革を進めていく必要があることは言うまでもありません。日本郵政は現在多くの課題を抱えており、西室新体制も困難な船出を強いられます。6月に新体制が発足するとするならば、今度こそ、経営陣が責任を持って統治する体制を創り上げ、経営改革を進めていくことを期待したいと思います。