11日、「日本経済再生に向けた緊急経済対策」が閣議決定されました。
大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の「3本の矢」を、一体かつ強力に実行し、長引く円高・デフレ等の中で、委縮し続ける経済に決別し、次々とイノベーションや新事業が生まれ、国民各層の雇用や所得が拡大する、豊かさと希望あふれる強い経済に転換させるための対策であり、補正予算のみならず、規制改革、政策金融、税制等も動員するとしています。
私も昨年の衆議院の選挙戦では「競争力ある強い日本を創る」ことを第一に訴えてきましたし、現下の厳しい経済状況を踏まえると、総論としては基本的に異論はありません。
しかしながら、以下の点が気になるところであり、今後、注視していきたいと思います。
一つ目は、対策に謡われているように、機動的な財政政策として実施される施策が、特に、即効性や需要創出効果の高いものであり、公共投資についても、国民の命と暮らしを守る事業、成長や地域活性化に資する事業に本当に重点化されているかどうかです。
今回の対策は、事業規模は20.2兆円と過去最大規模とのことであり、公共事業は5.2兆円と当初予算とほぼ同額が盛り込まれ、12年度予算における公共事業は10年ぶりの高水準にまで積み上がることになります。かつての自民党政権時代に行われたばらまき型の公共事業のように、一時的なカンフル剤にとどまり、長い目で見ると財政赤字の拡大のみが結果として残ったということの二の舞にならないかどうか、各事業の内容を精査する必要があります。
今後の国会での予算審議における大きな課題でしょう。
そして、二つ目は、私はこのことが本質的に重要だと考えていますが、今後、
3本目の矢である「民間投資を喚起する成長戦略」を適切に描くことができるかどうかです。
失われた20年と言われる長期の低迷を抜けだし、日本経済を再生するためには、まさに、対策にも謡われているように、環境・エネルギー、情報通信、保育・医療、農業等の成長分野において、規制改革、民営化、対外開放等により、民間の新規参入を促し、自由な競争を通じ、イノベーションや新事業に繋げていくことが不可欠です。
このためには既得権に厳しく切り込んでいく必要がありますが、業界に支援されている自民党政権が覚悟を持ってこうした取り組みができるかどうかです。
日本経済再生本部及び産業競争力会議等の議論の推移を見守りたいと思います。
更に、三つ目は、中長期的な財政規律の確保です。
今回の対策等による補正予算の財源として国債を8兆円近く新たに発行することから、12年度予算における国の借金は約52兆円と、民主党政権下の44兆円の枠を大きく上回ります。昨日の債券市場で新発30年国債の利回りが1年4か月ぶりの水準に上昇するなど、マーケットは早速反応を示しています。
政府は中長期的な財政規律には配慮するとし、自民党も20年度にプライマリーバランス(基礎的財政収支)を黒字化する目標は堅持するとしています。そして、経済財政諮問会議でこの点の議論を行い、6月までにまとめる「骨太の方針」において中長期的な財政再建の道筋を示すとしています。
今後の経済財政諮問会議等の議論の推移を見守りたいと思います。