G8サミット(主要8か国首脳会議)は18日、首脳宣言を採択し閉幕しました。
世界経済については、「見通しは引き続き弱いままだが、米国、ユーロ圏、日本でとられた重要な政策措置などにより下方リスクが減少」しているが、「脆弱性は残っており、持続可能な成長と雇用を回復するために各国が必要な改革を推し進める必要がある」としました。日本については、「日本の成長は短期的な財政刺激策、大胆な金融政策、民間投資を喚起する成長戦略により支えられる」と「アベノミクス」を評価したうえで、「信頼できる中期的な財政計画を定めるという課題に応える必要がある」と、財政健全化に向けた注文を付けました。今後の経済政策については、「金融政策は回復を支え、国内の物価安定に向けられるべきだ」として、日銀などの金融緩和が通貨切り下げを目的とするものでないことを確認するするとともに、財政健全化については、「中期的な財政の持続可能性を回復することは依然として優先事項。財政政策は経済状況に応じて短期的には機動的になることを可能とすべきだ。財政健全化のペースは異なる国内の経済状況に応じて差異を設けるべきだ」として、各国が景気下支えのために財政出動することに理解を示しました。
また、経済分野の首脳宣言では、3つのT(Trade(貿易)・Tax(税)・Transparency(透明性))を示しました。Trade(貿易)については、日米欧を中心とする自由貿易協定の推進で合意し、TPPや日欧EPA、米欧FTAなどは可能な限り速やかにすべての協定の完結を目指すとし、先進国と途上国の隔たりの大きい世界貿易機関(WTO)交渉の停滞を背景に、WTO重視の姿勢から転換しました。Tax(税)については、多国籍企業の課税回避防止策で、企業や個人の資金の流れを把握するため、金融機関が保有する口座情報を他国の税務当局と自動的に共有する枠組みの構築を明記し、多国籍企業が世界のどこで利益を生み、税を支払っているかを税務当局に報告させるひな形を作るとしました。Transparency(透明性))については、誰が実際に企業を所有し、利益を得ているかに関する情報を課税当局や法執行機関が利用可能にするため、国別行動計画を発表するとしました。
総括すれば、日本にとっては、「アベノミクス」が長期低迷の打開策として一定の支持を得、日本の世界経済の牽引役としての期待が久しぶりに高まったほか、首脳宣言で3つのTを示したことで、G8が共同で貿易・投資・税等に関するルール作りをしていく方向性が示されました。G8の世界経済における影響力は低下していますが、共通のルール作りでG8の壁がこれまで以上に低くなっていけば、途上国も含めた世界の共通ルール作りの進展も促していくことになると思います。